豚肉価格の高騰が生み出した中国の新たな大富豪

最近の中国経済と言えば、豚肉価格高騰のニュースが真っ先に挙げられるだろう。アフリカ豚コレラが猛威を振るい、中国全土の養豚場での飼育頭数が4割近く減少したうえ、米中貿易摩擦により豚のエサとなる米国産大豆に高い関税が課されたため、夏頃より中国国内の豚肉価格は急上昇し、庶民の食卓に大きな影響を及ぼしている。

国家統計局のデータによれば、今年9月の豚肉価格は前年同期比から69.3%も上昇した。豚肉だけでCPI(消費者物価指数)を1.65ポイント押し上げ、9月のCPIは過去6年間で最高となった。豚肉価格高騰の影響は計り知れず、庶民の生活が大打撃を受けた一方で、ある養豚業者は最新の中国富豪ランキングで10位以内に躍り出ることになった。

先日、フォーブスが2019年の中国富豪ランキングを公開した。IT大手のアリババ創業者の馬雲やテンセントの馬化騰、ディベロッパーの恒大グループの許家印といった第1位から3位までの顔ぶれこそ変わらなかったが、ちらほらと新しい名前も上位に食い込んだ。

その1人が第9位に入った秦英林(とその家族)である。現在1173.8億元(約1兆8300億円)の資産を有すると目されるが、これは昨年と比べ928.8億元(約1兆4500億円)増加しており、順位を60位も上げてのランクインだ。注目すべきは、この大富豪の資産と豚肉価格の高騰が密接に関係していることだ。

秦英林の主な資産は、自身が創業者である企業の株式である。それは牧原食品株式会社という、営業利益の95%を豚肉とその関連製品が担う企業だ。つまり秦英林はまさに「養豚富豪」と言えるだろう。所有する株式は全体の40.85%を占める。

最近の豚肉価格の高騰を受け、牧原食品株式会社の今年1~9月の純利益は296%増の13.87億円(約216億円)にのぼった。しかもこれは、前の半年に出た1.56億元(約24億円)の損失を補ったうえであるため、実質的な純利益は15億元(約234億円)を超える。

これにより、企業の株価も急激に上がった。今年の株式市場全体の動きはイマイチだが、こと牧原食品株式会社に関していえば、完全に強気相場であった。今年年初には約28元(約437円)であった株価が、最も高い時で103.6元(約1616円)まで値上がりした。実に270%の上昇である。現在も93元(約1451円)付近で推移しており、上昇幅は230%以上を保っている。

株式資本21.6億元(約337億円)の牧原食品株式会社の時価総額は、いまや2000億元(約3兆1200億円)を超える。また秦英林が保有する株式の価値は約820億元(約1兆2800億円)に相当する。このように豚肉価格の高騰により、一養豚企業の株が爆発的に上がり、一人の大富豪を生み出したのである。

秦英林が中国富豪ランキングのベストテンに急浮上した一方で、ランキングからはじき出された者もいる。それが、ベストテンの常連であった王健林(商業不動産大手のワンダ・グループ代表)である。昨年のランキングでは1566億元(約2兆4400億円)の資産をもって第4位に入っていたが、今年は682億元(約1兆600億円)も資産を減らし第14位に転落した。これはもしかして、今は不動産業よりも養豚業の方が儲かるということなのだろうか。

一つ明らかなのは、この富豪たちからすれば、主な資産はあくまで帳面上のものであり、容易に増減するということである。

秦英林が今回ランキング上位に入ったのは、豚肉価格の高騰が根本的な要因であった。しかし、豚肉価格は庶民の生活に深く関わる問題であり、政府はカナダからの輸入を許可するなど、すでに価格の制御に乗り出している。豚肉価格がこのまま高騰を続けるとは考えにくく、今後は下落することも十分考えられる。ならば、秦英林の第9位の座も安泰とは言えないのではないだろうか。

(希財網 https://new.qq.com/omn/20191108/20191108A0K63500.html を翻訳・編集・加筆)

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