公共施設に授乳室の設置を義務付け―中国広州市

――WHOやユニセフが母乳育児を推奨してからずいぶん経ち、日本ではデパートや博物館などに授乳室が完備されるようになってきました。しかし、まだ鉄道の駅には授乳室がないなど、全体的な数が足りていないこともよく指摘されています。そんななか、中国広州市では、母乳育児を推進するため、公共施設などに授乳室の設置を義務付ける条例が可決されました。これから、中国でも授乳室を見かけることが多くなるかもしれません。

(生活報 http://baijiahao.baidu.com/s?id=1648823897003438090 を翻訳・編集)

10月29日広州市で「母乳育児促進条例」が可決された。これにより、公共施設などに授乳室の設置を義務付け、働く女性の授乳の権利を守ることを目指す。

まず授乳室について。デパート、公園、鉄道駅など、面積が1万平方メートルを超える、または通過人数が1日1万人を超える場所には授乳室の設置が義務付けられることになった。2016年より広州市は授乳室行動指針をスタートさせ、多くの母親の意見を聞いてきた。彼女たちは決して母乳育児をしたくない訳ではない。多くの客観的な事由により、母乳育児を諦めざるを得ないのだ。これは母親たちの願いを叶える条例と言える。

授乳室の具体的な条件も定められている。独立した部屋であり、通風・採光ができ、授乳椅子が備え付けられているなどである。また、プライバシーを守る配慮がなされねばならず、エコで安全な材料が使用されねばならない。

条例では、公共施設などが規定通りに授乳室を設置しない場合、担当行政機関が改善期限を定めて警告を行うことになり、それでも改善しない場合は2万元(約30万円)以上5万元(約75万円)以下の罰金が科される。 

もちろんこの条例は母親たちに母乳育児を強制するものではない。条例中の文言を「母乳育児をすべきである」とするか、「母乳育児を推奨する」とするかは議論を巻き起こしたが、最終的には「生後6カ月までは完全母乳を普及させ、可能ならば2歳までは他の食事を補いながら母乳を続けることを推奨する」という表記になった。

次に、働く女性が授乳するための環境を整えなければならない。会社で働く母親が母乳育児をする場合、毎日職場で搾乳し冷凍して持ち帰り、乳児の翌日の食事にする。そのような母親のうち、職場に授乳室がある人は3%しかいない。85%はトイレまたは誰もいないオフィスで搾乳しているという。しかしながらトイレという不衛生な場所で搾乳するくらいなら諦めよう、粉ミルクをあげようという人も多い。

また、母親が母乳育児を諦める大きな原因として仕事の忙しさが挙げられる。生後6カ月になるまで完全母乳をしない、または維持できない理由を調査したところ、「産休が短く仕事が忙しいから」(57%)という理由が、「母乳が出ないから」「体型を維持したいから」「粉ミルクの方が便利で栄養も豊富だから」などの理由を上回って、最も多かった。

そのため今回の条例では、企業は一歳未満の子供を育てる女性職員に対して、毎日の労働時間内に1時間の哺乳時間を与えなくてはならないと定めた。哺乳時間も労働しているとみなし、その時間分の給料をきちんと払わなくてはならない。また条例には「女性職員が比較的多い企業は、職員らの要望に応じて社屋に授乳室、母乳貯蔵庫を設けるべきだ」と書かれている。

WHOによれば「過去数十年間でますます多くの研究が、母乳が乳児の健康にとって役立つことを証明している」という。しかし中国消費者協会によると、2018年の調査において、乳幼児にとって最も良い栄養摂取方法として「母乳」を選んだ母親は、2007年の83%より減少し、77%にとどまった。一方、「粉ミルク」を選んだ母親は11%で、2007年の5%より倍以上増えた。

この要因としては粉ミルクの質の向上や、粉ミルク販売会社の宣伝戦略が挙げられるだろう。今回の条例はこうした中国の現状への焦りが背景にあったものと考えられる。母乳育児を推進するため、行政がかなり具体的に動いたといえよう。これを受けて中国の、少なくとも広州市の育児の現場は、今後大きく変わっていくだろう。

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